ドッジ(かわす)、ダック(かがむ)、ディップ(つっこむ)、ダイブ(飛ぶ)、そして、もう一度ドッジ……この5つの頭文字の“D”を備えたスポーツこそ、ドッジボールだ。小学生の時に遊びでやったドッジボールとは異なり、対戦相手にボールをぶつけて退場に追い込み、逆にコートに復帰するや、対戦相手にボールを叩きつけてぶちのめす。
いま、ドッジボールは、ポップ・カルチャー・スポーツの新興勢力になり、全米各地に成人のドッジボール・リーグが誕生。ニューヨーク・タイムズ紙までが「伝統的であり新しいスポーツ」として紹介している。そんなスポーツ・レボリューションのドッジボールをいち早く題材にしたのが『ドッジボール』だ。
とにかくすごいのは、ドッジボールの試合だ。全身のバネを使って思い切りボールを投げつけ、華麗なフットワークでボールをかわし、宙を舞っているように横っ飛びしてボールをキャッチ&そのままのスローイングといった具合。もちろん、CGなんかは一切なし。出演者たちのスピード感に溢れたアルティメットなガチンコ勝負だ。あくまでも出演者たちが自らの体を張って、ケガまでしたという本気のファイトに注目。これぞ、コートの上の格闘技! コーチの言う「怒れ!プレーする時にはワルに徹しろ!」との言葉通り、怒りがボールに伝わり、そして、ぶつけられた痛みが、観る者にも伝わるリアリズムがあり、ド迫力とスペクタクル性に圧倒される。
一方、ギャグとユーモアも絶好調だ。あのベン・スティラーがホワイト役に扮し、70年代風の長髪をなびかせ、ヒゲをたくわえ、マッチョな体でポージングする。おまけに、低能で高ビーで性格最悪というキャラは、さえない男を得意としてきたベンが新境地を開拓したものといえそう。その自分をおバカと思わない勘違い男ぶりに大爆笑。ちなみに、彼の実生活の妻でもあるクリスティーン・テイラーが、弁護士兼ドッジボーラーとしても参加している。おっと、エンド・クレジットでのベンの「変身ぶり」をお見逃しなく。
また、主人公のピーター役には、『スウィンガーズ』(96)、『ザ・セル』(00)、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(97)などのヴィンス・ヴォーンが扮する。さえないピーターを情けなく演じるのではなく、ひょうひょうと演じているのもいい。さらに、ドッジボールの魅力を知って精神的に成長していく姿と、ホワイトのワイロ工作に心が揺れ動く姿には、ヴィンスの演技力がフルに発揮されている。
ちなみに、普通ならピーター役にはベンが扮して、ホワイト役をヴィンスが演じるということがありえただろう。しかし、『ドッジボール』では、ベンとヴィンスの役どころを替えてみたところにも面白さがある。これは、プロデューサーであるベン・スティラーの異能ぶりによる絶妙なキャスティングといえる。
脚本と監督は、『ドッジボール』が、初の長編劇映画の監督になるローソン・マーシャル・サーバー。なお、アクション俳優のチャック・ノリスと癌を克服してツール・ド・フランスで優勝したランス・アームストロングが、ハマリ役で特別出演している。